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2010.01.02
さて、所変わって森の中である。

このころんびあ王国は街を見渡す城の背には、深い樹海が茂っている。島国のこの国では、海岸線に街が発達しており、海から離れるにつれて手付かずの自然が残っていたりするのだ。ただし、城の左には国軍の駐屯地があるゆえ、その周辺は一般国民の立ち入りは禁じられている。そうでなくても、野生の獣――人を襲う動物を獣と呼ぶ――がうじゃうじゃといるであろう森に進んで入ろうとする国民はきっと一握りほどしかいないだろうが。
しかし、

「うぎゃああぁぁぁぁぁ・・・・・・」

そんな森から悲鳴が響いた。

声そのものは少女のものだったが、いかんせん女らしさのかける悲鳴だった。もしその場に一般国民がいたとして、この悲鳴がまさかこの国の姫君ともあろうお方から発せられたとは信じまい。だが、事実とは時に残酷なのである。

「あー・・・あー・・・・・・。信じらんない。蜘蛛の巣とか、もう・・・・・・やる気なくすわ」

見事、顔面にひっかかった蜘蛛の巣を手で払いながら悪態をつく。
ぐるりと辺りを見回すと、そこはもう360度森だった。木と木が重なり合い、奥に行くにつれ暗く、深く・・・・・・。今や足元を照らす光は、頭上から降り注ぐ木漏れ日だけだった。

「方向は・・・・・・あってる」

右手首につけた方位磁針が北を指していることを確認し、膝上まである様々な草を掻き分け前に進む。

この調子で行けば、明日の朝ごろに目的地に付いてその日の夜までには城に帰れるはずだ。黙って出てきた件については、後でお叱りを受ける覚悟はできている。父と母―――特に母には心配をかけるだろうが、自分が無事で帰ればいいだけの話しだ。

根元が腐ってばったりと倒れた大木を飛び越え、頭上に茂る枝を避け。

まさか勘当はされまい。
城を出てきたときは不安などまったく感じなかったが、森を進むにつれ、周りが暗くなるにつれて、その心に不安がもやのように広がりだした。

「いや・・・まさか・・・・・・。まさかね・・・・・・」

ぶつぶつと呟いていると、その不安はさらに大きくなっていく。

そういえば、昨日の朝に父から「外に出るな」と言われたばかりだったのを思い出す。それをものの数分で破り、次の日には城どころでなく、街の外に出てしまっているだなんて。しかも、親がよく子供に、「あの森には怖い生き物が沢山いるのよ。絶対に入っちゃダメだからね」とまで言い聞かす森の中に居るだなんて。

「・・・・・・勘当されても文句言えないわ。島流しされる・・・・・・」

でもまあ、一人でだって生きていけるし。大丈夫だし。
そう自分に言い聞かせるが、頬を嫌な汗が流れるのを防ぐことはできなかった。

と、


がさり


小さな音が耳をうった。



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