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2010.01.02
「!!」

反射で右手が腰に吊り下げた剣に伸びる。
中腰に構え、すばやく辺りを見回す。音が小さすぎてどこから響いてきたのかは分からなかったが、あれは明らかに自然の音ではなかった。

ただの動物か。それとも―――、獣か。

息を殺して辺りに気を配る。さっきと違う汗が頬を伝う。
こちらには向かって来ていないのだろうか。しかし、まだ動くのは早い。
まだ・・・・・・。
まだ・・・。


がさり


「!!」

近いっ!!
今度ははっきりと聞こえた。ほぼ真後ろ、10mもない。
ヒルト(柄)を握る手に力が入る。


ざっ・・・ざっ・・・・・・


がさがさと鳴る草の音の合間に、規則的な土を踏む音が混じる。

「・・・・・・獣、じゃ・・・ない?」

構えていた体から、少し力が抜ける。
暗い森の中から草木を掻き分けてこちらに向かってきたのは―――・・・・・・

「あ、天坂!?」

素っ頓狂な声が出た。
青い軍服はあちこちに引っ掛けたような傷があり、髪には木の葉が引っかかっている。どうやら、モモほど森を歩くのが上手くはないらしい。心なしか顔にも疲れがうかんでいるし。

モモからしてみれば、してやったりだ。自分は城よりも森のほうが性に合ってるのではと思うほどだ。
自分の敵では無いとわかって息をつくと同時に、よりにもよって天坂に見つかってしまうとは、と一気に気分が悪くなる。

柄から手を離し、不機嫌極まりない声音で叫ぶ。

「おい、天坂!! お前なんでここに―――っ」

が、


『がああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!』


人ではない声に、モモの声が掻き消された。

「!!!」

「!!!」

まさしく背後。

天坂の方を向いたモモの背後から、巨大な影が飛び出した。優に2mはありそうな、今までどこに隠れていたのかと思うほどの大きさ。それが、今まさしくモモに飛びかかろうとしていた。

「っ!! 姫様!!!」

思わず走り出した天坂であったが、あまりの不意打ちに初動が遅れ、もうすでに間に合うタイミングではなかった。

モモの目前にはもう、獣の大きく開いた口が迫っていた。人間など意図も簡単に丸呑みしてしまうほど大きな口には、鋭い牙が並び。そしてもう、避けることもできない距離だった。

時間が、止まったかのようだった。
何もかもがゆっくりに見える。天坂はその時の中で、後悔することしかできなかった。
あそこで気を抜いていなかったら。
もっと早く姫様を見つけていれば。
あぁ。ちくしょう―――・・・・・・


―――と、思わず伸ばした手の向こう。
赤い線が景色を切り裂くように走った。



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