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2010.01.02
『ごがああぁぁぁ・・・・・!!!!』


人ならざる声が、しかしそれでも断末魔だと分かるような悲痛の声を上げた。その口は、まるで口裂け女のように真一文に切り裂かれていた。涎と紅い体液を飛び散らせながら、獣はもんどり打って後ろにばったりと倒れた。牛と馬が合わさった―――頭には牡鹿のような角があったが―――でかい図体が、びくびくと痙攣して動かなくなった。

「・・・・・・」

まさかの光景に、天坂は腕を伸ばしたまま固まってしまった。

獣を一太刀で倒してしまった張本人―――モモは、一度剣をひゅんっと振って刀身にべっとりと付いた体液を振り落とすと、流れるような動作で腰の鞘に収めた。

「・・・・・・なんだ。その間抜け面は」

くるりと振り返ったその顔は不機嫌そうに歪められていたが、目立った傷は無い。

「な・・・な・・・・・・」

驚きのあまりに声が出なくなっている天坂。その様子にモモは溜息を1つ吐くと草を掻き分けて歩み寄り、その腹に蹴りを一発くれてやった。

「ふぐぅっ!!!」

途端、天坂は腹を押さえて蹲った。

「いつまでぼーっとしてるんだお前はぁ!! 何しに来た!!」

「うぉ・・・姫様・・・・・・もうちょっと力加減してください・・・・・・」

唇を噛んでぐっと涙を堪える。しばらくすると痛みも治まってきたので、天坂はゆっくりと身を起こした。

「姫様・・・、何しに来たは俺の台詞です。何してるんですかこんなところで。暮らすつもりですか」

「暮らっ・・・!! お、お前は私をなんだと思っている!! 私はターザンか!!」

がう、と噛み付かんばかりに吼えられ思わず天坂が身を引く。

「・・・・・・私は大丈夫だから、お前は戻れ。明日の夜には帰るから」

モモは先ほど倒した獣をちらりと見た。つられて天坂も見ると、その傷口はじゅう・・・と音を立てて湯気が上がっていた。不思議に思い辺りを見てみると、所々ちろちろと草の葉から火が上がっていた。

魔術か。
それならば、たった一太刀であの大きさの獣が倒されたのか納得がいく。ただ切ったのではなく、焼き切った。獣はその時の熱を吸い込んで、喉を火傷でもしたのだろう。天坂にはできない芸当だ。

素直に関心してしまったが、今はそこではない。

「だめです。今すぐ帰りますよ」

「断る」

「だ」

「断る」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

一瞬の沈黙。
破ったのは天坂だった。

「・・・・・・参考までに聞いておきます。姫様は一体どこへ向かおうとしているのですか」

質問のように聞こえるが、天坂は大方予想がついているのだろう。でなければ、森に来るはずがない。
モモはその意図を汲んで、にやりと不適な笑みをこぼした。

聞いてしまった天坂が悪い。一度口に出したらどんな手を使ってでも実行してきた姫君だ。質問をした時点で天坂の負けは決まってしまった。

モモは腕を組み、胸を張って堂々と言い放った。



「北部、カザリアだ!!」


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第一章 了
next chapter coming soon...
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